研究概要 |
近年,細胞のアポトーシス抵抗性獲得が,発がんメカニズムに大きな影響力をもつ経路として重要視されている.そして,がん細胞が獲得した正常細胞にはないアポトーシス抑制機序が,抗がん戦略の重要なターゲットとされてきた.XIAPは,内在性のCaspase阻害因子であり,がん細胞で高発現がみられるアポトーシス抑制因子であることから,最近,新規制がん剤開発のターゲットとして注目されている. 当研究室では,創薬ターゲットタンパク質の標的部位に結合するペプチドを,in silico網羅的スクリーニング手法でデザインし,最適化した結合ペプチドの立体配座に基づくフィルタースクリーニング手法によってミメティクス低分子化合物をデザインする,というコンセプトで創薬を行っている.本研究では,XIAP阻害剤開発の第一段階として,Smac/XIAP複合体3次元構造をもとにXIAP結合能をもつ最適ペプチド配列の決定を行い,in vitro assayでそのXIAP阻害能を検証した.その結果,阻害能が最も高い配列としてAVPFが得られた.しかし,細胞抽出液との反応によってAVPFのXIAP阻害活性が失われることから,細胞内では,XIAPとの結合に必須なN末端Alaが修飾を受けて失活すると考えられ,Alaが露出している状態でXIAP阻害ペプチドを細胞に導入しても,高いアポトーシス促進効果は得られないことが示唆された.そこで,AVPF配列のN末端側にCaspase cleavable配列を付加したところ,細胞におけるAVPFのXIAP阻害能が高まることが示された.以上の結果を踏まえて,AVPFとXIAP-BIR3との結合pharmacophoreを用いて,Smacミメティクス低分子有機化合物の設計を進めていく.
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