研究課題
特定領域研究
白血病や固形腫瘍におけるセプチン遺伝子異常が多数報告されている。しかし、その意義や分子機構はよくわかっていない(MCB2005)。培養細胞レベルの知見であるが、スタンフォード大学との共同研究により、細胞質分裂に先立つ染色体整列・分配にもセプチン系が必須であることを明らかにした。すなわち、セプチン系の破綻が染色体不安定化(異数性)につながり、がんの発生や悪性化に寄与する可能性がある(Science 2005)。セプチンサブユニットの1つSept4に関しては、ヒトの大腸がんにおいて高発現する一方、白血病においてはアポトーシス誘導活性によってがん抑制効果をもつという矛盾した仮説が異なるグループから提示されている。我々は、この問題を解決するために、Sept4遺伝子欠損マウスとSept4過剰発現マウスを作成して個体レベルの機能解析を行った。まず、いずれのマウス系統でも自然発がん傾向は見られないことを確定した。次に、Fasによる劇症肝炎モデルにおいて、Sept4欠損マウスでアポトーシス耐性が低いことが確定した。その原因を探索する過程で、Sept4蛋白質が肝実質細胞ではなく、肝炎や細胞外マトリックスの蓄積に重要な役割を果たす星細胞(Hepatic Stellate Cells, HSC)に特異的に発現することがわかった。このユニークな発現パターンを利用して、四塩化炭素による肝線維化モデルやジメチルニトロサミンによる発がんモデルにおけるHSC機能とSept4の存在意義を解析し、興味深い知見が得られた(祝迫ら、投稿準備中)。なお、本領域の主旨からは外れるが、生物学的に重要な知見も得られたので付記する。本マウスが予想外の雄性不妊を呈することが判明したため、精子鞭毛内の輪状小体がセプチンの環状高次集合体(セプチンリング)であり、その破綻によって生殖機能を失うこともわかった。同時にヒトの精子無力症検体でもセプチンリングの破綻を認め、セプチン細胞骨格の生殖医学的意義を発見した(Dev Cell 2005)。以上のような研究の進展によってセプチン系を再定義する機が熟し、総説を発表した(Curr Opin Cell Biol 2006)。
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生化学 (印刷中)
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