研究概要 |
血管新生の促進に寄与するVEGFやthrombinによって、NFATc経路が活性化され、また早期にその自己終息の役割を担うダウン症候群関連因子(DSCR)-1が誘導されることを見出し報告したが、本年はこの因子の機能を分子レベルでさらに解析するために、特異的抗体の産出、knock-down系、adenovirusを用いた強制発現系の確立を行った。その結果、VEGFやthrombin刺激でDSCR-1のタンパク誘導が早期に内皮細胞で生じること、正常マウスを用いた免疫染色ではDSCR-1が脳神経系に強い発現があるのみならず、脳血管内皮にも発現が認められることが見出された。DSCR-1を強制発現した内皮細胞ではthrombin刺激によって誘導される血管新生関連のCyr61, ESM-1, IL8や炎症関連のVCAM1, E-selectinが強く減少することが網羅的アレイによって認められた。またDSCR-1高発現下ではthrombin/VEGF刺激によって活性化された内皮への単球接着、B16メラノーマの接着が減少し、この効果はNF-κBの抑制因子I-κBαと共に作用させることで、相乗的に寄与することが確かめられた。逆にDSCR-1や1-κBα発現をSiRNAで中程度に減少させると、刺激誘導におけるVCAM-1発現や単球接着が増強されるが、ほぼ完全にこれらfeedback因子の発現を阻害すると、アゴニスト刺激後での細胞状況が悪く、VCAM-1の発現も低下する結果が得られた。さらにはDSCR-1の刺激応答性を示す1.7kb promoterにlacZレポーターを繋いだconstructをHprt-locusにknock-inした組み換えES細胞の単離を行うと共に、リンパ管内皮でも血管内皮同様アゴニスト刺激でDSCR-1の誘導性があることを、ラットから単離したリンパ管内皮細胞により確認した。
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