研究概要 |
SAGEライブラリーの比較から新しい癌特異的遺伝子を抽出し、標的治療を視野に入れた消化管癌の診断系を確立することを目的として以下のとおり実施した。 1)消化管癌と正常臓器のSAGEライブラリーの比較による新規癌特異的遺伝子の抽出:我々の胃癌SAGEライブラリー(GEO accession no.GSE545)と主要14臓器(心臓、肺、肝臓、脳など)のそれとの比較および定量的RT-PCR法により、APIN,TRAG3,CYP2W1,MIA,MMP-10,DKK4,GW112,REGIV,HORMAD1の9遺伝子が胃癌特異的であることを見い出した。食道扁平上皮癌についてSAGEライブラリーを作成し、正常食道のそれと比較して発現の異なる遺伝子群を抽出した。 2)Recombinant蛋白の調整、抗体作成およびELISA系の構築:抗体の入手可能であったMIA,DKK4,MMP-10および独自にポリクローナル抗体を作成したREGIVでは、免疫染色およびELISAを行い、MIAとMMP-10の組織内発現が悪性度と相関すること、REGIVとMMP-10がよい血清マーカーであることを見い出した。他の遺伝子については順次recombinant蛋白の調整、モノクローナル抗体の作成を行い、特異性を確認中である。 3)新規癌特異的発現遺伝子の機能解析:REGIVの胃癌細胞株強制発現系で、5-FUによるアポトーシスの抑制を明らかにした。さらに、数種の細胞質内および核内蛋白と相互作用を示すことを見い出すとともに、動物モデル系において腹膜播種を促進することを明らかにした。 4)SAGEライブラリーに基づいたカスタムオリゴDNAアレイの作成とそれによる検索:上記で抽出した癌特異的発現遺伝子を加えた約200遺伝子を搭載する三次元カスタムアレイを新たに作成し、約20症例の胃癌を解析し臨床病理学的事項との検討を行った。
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