研究概要 |
1)EBV 陽性上咽頭癌に浸潤するCD8^+T細胞が認識する抗原の解析 EBV陽性の上咽頭癌局所に浸潤しているT細胞が認識する抗原について以下の知見を得た。患部の生検組織の一部をインターロイキン2添加培養液中で2-3週程度培養し解析に必要な腫瘍浸潤リンパ球を得た。同じ患者の末梢血リンパ球をCD40-L発現NIH3T3細胞とインターロイキン4で刺激を繰り返し、CD40活性化B細胞を得た。これにEBNA1,LMP1,LMP2,BZLF1,BARF1等のウイルス遺伝子のmRNAを導入し抗原提示細胞を作製した。腫瘍浸潤リンパ球をCD4^+T細胞とCD8^+T細胞に分離した後、上記の抗原提示細胞と混合培養し、反応性をインターフェロンγ-エリスポットアッセイで検討した。一人の患者から得られた腫瘍浸潤リンパ球のCD8^+T細胞がBZLF1 mRNA導入抗原提示細胞に特異的に反応した。この反応は末梢血リンパ球CD8^+T細胞に比べて明らかに高いものであり、腫傷浸潤リンパ球の認識抗原の一つがEBVのlytic cycle proteinであるBZLF1蛋白であることが明らかとなった。EBV陽性癌局所に浸潤するT細胞の認識抗原はこれまで同定されておらず、新知見と思われる。今後は、BZLF1を含むlytic cycle proteinを標的としたEBV陽性癌に対する免疫療法の可能性について検討を続ける予定である。 2)EBNA1特異的CD4^+T細胞が認識する新規エピトープの同定 EBNA1はすべてのEBV陽性癌に発現しているため、免疫療法の標的抗原候補である。今回、HLA-DR,DP,DQによってそれぞれ提示される新規エピトープに特異的なCD4^+T細胞クローンを複数個樹立した。今後は、エピトープペプチドの詳細な構造解析、およびCD4^+Tクローンの癌細胞に対する傷害性等を検討する。
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