研究概要 |
シアノバクテリアの時計蛋白質KaiA,KaiB,KaiCの組替え蛋白質をATPと試験管内で混合してインキュベートすることでKaiCのリン酸化の概日振動がin vitroで発生することを示した(Science,2005)。このことは,生物リズムの新しい展開を約束するだけでなく,新たな蛋白質機能を発見したという意味で蛋白質科学,新たな長周期振動発生機構の発見という意味で動的物理化学(非線形科学),数理生物学に画期的な材料を提供し,さらにその反応が極めて遅く,ATP消費も極端に少ないことから,ある種の新規機能性材料開発にも示唆を与えうる可能性がある。理論モデルについては,複数の理論系研究グループと共同研究を行い,実験系と理論系の研究者の相互乗り入れを図った。これらの研究成果は,現在投稿中である(Miyoshi et al.,submitted to BMC Bioinformatics ; Kurosawa et al. submitted to Biophysical J)。 真核生物型のキメラ蛋白質を用いた,人工振動ネットワークの形成(担当・松本)については,キメラ蛋白質の分解速度,プロモーター活性の強弱,培養条件などを振り,いわゆる「inhibitor-activator系」を用いたモデルを取り入れることによって,いくつかの周期発現振動を開発することに成功した。現在,早稲田大学から,博士研究員が松本研究室に出向し,ショウジョウバエ培養細胞の取り扱いや基本的な技術を習得しつつある。岩崎グループでは,現在-細胞レベルの発光・蛍光長期モニタリングシステムを構築しつつあり,より精度の高い遺伝子発現の挙動や揺らぎの観測・制御を目指す予定である。
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