研究概要 |
我々はこれまで、新規のトランスポゾンであるSleeping Beautyトランスポゾンを用いることにより、多数の変異マウスを迅速に作製する方法を開発してきた。今年度の本研究では、この技術をゲノム機能の理解へ向けてさらに発展させるため、以下の研究を行った。 (1)Sleeping Beautyトランスポゾンを用いて作製した変異マウスにおける、ホモ変異体の作製と表現型の解析。Sleeping Beautyトランスポゾンによる変異体の中で、既にホモ変異体の表現型が報告されているSox5およびBmpr1bについてホモマウスを作製したところ、過去の報告と同一の表現型が得られた。これより、本トランスポゾンベクターの変異原性の高さが証明された。さらに、過去にホモ変異体が報告されていない遺伝子についても解析を進め、胎生期または生後の致死、多動などの表現型が得られた。また、多くの変異体を解析する過程で、Sleeping Beautyの転移は転移前の在位の近傍の約4Mbに集積する傾向があることがわかった。この性質を利用して、ゲノムの特定の領域に、網羅的に変異を導入できることを証明した。また、約2割の転移は他の染色体に広汎に起きることもわかり、ゲノムワイドな変異導入も可能であることが証明された。 (2)トランスポゾン変異マウスのデータベースの構築。変異マウスに関するデータベースを作製し、発表論文(Keng et al.,Nature Methods,2005)に付随する形で、公開した(http://www25.casi.osaka-u.ac.jp/japanese/database/index.html)。変異マウスの精子の凍結保存も進め、約200系統のマウスの精子凍結を終えた。
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