研究概要 |
本研究では,系統プロファイリングによる遺伝子機能推定の有効性を検証することを目的とし,シアノバクテリアに起源を持つ植物の葉緑体タンパク質(CPRENDO)を新たに大量に発見した。 1.ゲノムが完読された生物の全推定タンパク質配列について,総当たりBLASTPの結果に基づいてクラスタリングを行い,これに基づいて「相同グループ」をつくるGclustソフトウェアの開発を行い,145種の生物のゲノムのクラスタリングまでできるようになった。 2.この結果に基づき,特定の生物群にのみ保存されている相同グループ(タンパク質)を選び出す系統プロファイリングを行った。 3.系統プロファイリングを,9種のシアノバクテリア,3種光合成細菌,2種の非光合成細菌,2種の非光合成真核生物,2種の光合成真核生物(原始紅藻,シロイヌナズナ)からなるデータセットに適用し,シアノバクテリアと真核光合成生物に共通に存在するタンパク質を選び出した。この際,条件検討を行い,非光合成生物には存在しないという条件は必要ないことなどが判明した。これに基づき,最も緩い条件では,シロイヌナズナの1,192個,紅藻の676個のタンパク質がCPRENDO候補となったが,その約半数が機能未知であった。 4.実験的解析のため最少セットを選んだ。非光合成生物には存在しないという最も厳しい条件で選択される84個の相同グループに含まれる44個の機能未知タンパク質の機能解析を,シロイヌナズナとSynechocystisで行った。56個のシロイヌナズナのタンパク質について調べたが,53個が確かに葉緑体に局在することがわかり,CPRENDOと証明された。対応するSynechocystisの40個の遺伝子について破壊株を作ったが,30個で光合成機能に異常があり,細胞内共生の前後で保存されているタンパク質の大部分が光合成に「関わることが実証された。
|