研究概要 |
統合失調症感受性遺伝子変異が高次脳機能では有利に働くことで、平衡選択によりヒト集団中にひろく安定して維持されているという仮説を立て、その検証を目的とした分子進化学的解析をグルタミン酸受容体遺伝子群について行い、以下の成果をあげた: 1)グルタミン酸受容体遺伝子チンパンジー配列の決定 グルタミン酸受容体遺伝子群26遺伝子のほとんどにあたる21遺伝子の全翻訳領域とその上流約1kbのチンパンジーにおける塩基配列の決定を行った。ヒト配列との比較解析の結果、いずれのグルタミン酸受容体遺伝子についてもKa/Ksはヒト-チンパンジーともに平均よりも小さく、翻訳領域への強い進化的制約が示唆された(論文準備中)。 2)グルタミン酸受容体遺伝子群におけるヒト特異的アミノ酸置換の同定 1)の解析からヒト-チンパンジー間でのアミノ酸置換を78箇所同定した。これら全てについて他の類人猿4種及びその他の霊長類5種について該当配列を解析し、ヒト特異的アミノ酸置換を21個同定した。 3)グルタミン酸受容体遺伝子翻訳領域多型情報の整備 公的db及び文献検索から収集したグルタミン酸受容体遺伝子群の非同義SNPs(全107個)の頻度測定を行い、日本人検体において多型性を示すものを32個、さらに充分な頻度(MAF>0.05)を示すものを18個同定した。 4)グルタミン酸受容体遺伝子の上流調節領域の多型解析 NMDAタイプの5遺伝子(GRIN1、GRIN2A、GRIN2C、GRIN2C、GRIN2D)、カイニン酸タイプの4遺伝子(GRIK1,GRIK2,GRIK4,GRIK5)の上流領域約5kbの多型検索をヒト50検体、チンパンジー50検体を用いて行った。今年度終了分に関しては、ヒト、チンパンジーともに有意なTajima's Dの値は得られなかった。
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