研究概要 |
1倍体の単細胞プロトプラストの最初の不等分裂時を濃縮した集団から抽出したRNAから、ベクターキャッピング法による完全長cDNAライブラリー(第一不等分裂ライブラリー)を作製し、若い2倍体から抽出したRNAからオリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー(2倍体ライブラリー)を作製した。各ライブラリーについて、両端からEST解析を行い、第一不等分裂ライブラリーから1万1千、2倍体ライブラリーについては8千8百クローンについて配列を得て、既知の配列とともにクラスタリングした。 2倍体ライブラリー8,805クローンは2,722種類の転写産物を含んでいた。2倍体ライブラリーに多く含まれる遺伝子には、真核細胞としての基本的な活動に関わる遺伝子の割合が大きいことがわかった。さらに、遺伝子ファミリーのメンバーの発現量比が胞子体ライブラリーで他のライブラリーと有為に異なっている例を見いだした。このことは、2倍体特異的な発現制御がなされていることを示唆している。 一方、このライブラリーに特異的なクローンの割合は低く、約713遺伝子にとどまった。この中の多くは、ESTの出現回数が少なく、単純に特異的であると言えないので、より多くのタグを決定する必要がある。そこで、Serial Analysis of Gene Expression (SAGE)による発現解析を行うことをとし、橋本真一博士(東京大学医学系研究科)と共同でSAGEライブラリーを作成した。 アメリカエネルギー省Joint Genome Institute (JGI)における全ゲノムショットガンシークエンスのデータは現在アセンブル中であるが、アセンブリー結果の公開に先立ち、raw dataに対してBLAST検索をおこない、重複して発見された遺伝子をアセンブルすることによって局所的なコンティグを生成し、遺伝子構造を予測するシステムを作成した。さらにJGIにおいてなされたイヌカタヒバの全ゲノムショットガンデータに対しても同様の処理を可能にした。これにより、陸上植物進化の初期に分岐した生物を含む遺伝子系統樹を構築する基盤が整った。
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