研究課題
特定領域研究
挿入因子ISは、自身のトランスポゼースの働きにより欠失・重複・逆位等のゲノム再編を促す。本研究は、ゲノムに生じた再編に基づいて、多種多様な病原性大腸菌、赤痢菌株の系統関係を明らかにすることにより、病原性細菌の生物学的由来を知ることを目的としたものである。一方、ゲノム再編の同定の過程で様々なISファミリーに属する因子を見出したが、中でもIS1のファミリーに属する様々なメンバーが古細菌を含む広範な細菌群に存在することが分かった。そこで本研究は、多様な細菌のゲノムに存在するIS1ファミリーのメンバーをさらに同定し、それらの構造、及び、それらにコードされているトランスポゼースの機能解析を行うことをもう一つの目的としたものである。大腸菌、赤痢菌ゲノムの再編成を調べるために、K-12 MG1655株の配列を基にして0-30分に相当する領域(約1400kb)を解析し、系統の分類と関係を知る上で良い任意の菌株共通に存在する挿入、欠失、置換などの変異を見出し、これらの変異の有無を基にして系統樹を作成した。我々は、これまでに0-10分に相当する領域で見出された任意の菌株共通に存在する変異を基に、感染研由来のEnterohemorragicなどの6群に属する大腸菌68種と赤痢菌5種のゲノムを解析し、大腸菌が異なるいくつかのクラスターを成すこと、また、赤痢菌3系統が大腸菌内の特異的なクラスターを成し、医学的分類と生物学上の分類との関係が解明できた。一方、IS1に関して、古細菌、らん藻を含む様々な細菌ゲノムから見出したIS1ファミリーの因子のトランスポゼースに、2つのDNA結合ドメインを成すと思われる領域がN末に,3つの酸性アミノ酸(DDE)を含む触媒に関わると思われる領域が中央に、また、ダイマー形成に関わると思われるロイシンジッパー様配列がC末に存在することが分かった。そこで、各領域に変異を持つIS1変異体を作成し、in vivo転移系で転移能を調べると共に、変異トランスポゼースのDNA結合能とダイマー形成能を調べることによって、各領域に変異を持つトランスポゼースが予想される機能を喪失していることを明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
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