研究概要 |
現在までに同定された若年糖尿病MODY1-6遺伝子のうち5種類は転写因子をコードし、機能連携ネットワークを形成する。一連のMODY転写因子は全て膵β細胞の特異的機能に関連した遺伝子発現を制御する。2型糖尿病とMODY1-6の病態が類似することから、同ネットワークには未知MODY遺伝子のみならず主たる2型遺伝子も含まれる。膵β細胞機能に関する重要遺伝子プロモーターの共通cis配列を解析しtrans因子をスクリーニングするという、発現調節軸に焦点を絞った戦略により、幾つかの転写因子遺伝子において疾患感受性SNPを同定した。本戦略は有効であったが、特異的遺伝子群のプロモーターはほぼ解析しつくされ、有力候補が枯渇しつつある。そこで本研究は、独自集積した12,000種類のラット膵島ESTから選別したプローブを用い、大規模in situ hybridizationによりβ細胞特異的な新しい候補遺伝子を獲得し、プロモーター領域を解析する。次いで、共通シス配列に結合する転写因子遺伝子を解析することにより、新規MODY遺伝子とメジャーな日本人の2型糖尿病遺伝子の同定を試みる。 予備実験から膵島特異的遺伝子は全体の ̄4%と試算した。既知蛋白をコードするラット膵島EST6,000種類の内、5,191個についてのin situ hybridizationを終了した。ラット膵内分泌組織に特異的な遺伝子、膵外分泌または膵内分泌のいずれかに発現が偏った共通遺伝子、発現が両組織で同レベルの遺伝子(ハウスキーパー遺伝子)の3群に分類すると、それぞれ2.5%,41%,46.5%の割合であった。 転写因子HIF-1α遺伝子において2型糖尿病発症と有意に関連する多型(P582S)を見出した。変異蛋白の機能は低下していた。
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