研究課題
特定領域研究
ドパミンと線条体や前頭前野の神経可塑性の間に関連があるが、運動皮質(M1)の神経可塑性との関連は動物実験も含めて未解明である。本研究は、パーキンソン病での臨床研究によって、M1の可塑性とドパミンの関連を解明することが目的である。ヒト脳可塑性のモデルとしては連合性ペア刺激(paired associative stimulation : PAS)によるM1でのシナプス長期増強(LTP)様効果を用い、パーキンソン病患者(抗パーキンソン剤服用時と非服用時)と健常者と比較した。M1の可塑性を誘導する手法として、末梢神経電気刺激によるM1への求心性入力とM1への経頭蓋的磁気刺激法(TMS)による入力を一定の時間差で組み合わせた連合性ペア刺激(PAS)を5-20秒間隔で90-250回繰り返す方法が提案されている(Stefan et al.2000)。本研究での具体的方法としては、右正中神経を手首部で電気刺激し、25ms後に左M1にTMSを与えるPASを5秒ごとに繰り返して合計20分行い、PAS前後でのM1興奮性をTMSによる運動誘発電位の振幅で定量的に評価した。被験者としては、薬剤オフの状態でのパーキンソン病患者(軽度ないし中等度の患者)18名を対象とした(うち10名では薬物服用時も同様の検討を行った)。対照としては、年齢と性別をマッチさせた健常被験者11名で同じ実験を行った。健常者では認められたPAS後のLTP様可塑性が、パーキンソン病患者(薬物非服用)では消失していた。また、抗パーキンソン剤を服用した場合には、健常者に比べてやや程度は弱いものの、PAS後にM1興奮性の増大の回復が認められた。本研究結果は、ドパミンがM1の可塑性を修飾している可能性を示唆している。ドパミンが可塑性そのものではなく可塑性の誘導されやすさを調節しているという結果は、メタ可塑性の一例と考えられる。また、パーキンソン病では運動学習などの高次の運動統御機能の障害が報告されており、脳可塑性の低下と関連している可能性がある。
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