研究概要 |
1)NR2Aノックアウトマウスを用いた解析 我々は、野生型マウスを用いた薬理学的・生化学的な解析により海馬神経回路の非対称性を明らかにした。そこで、これを異なる手法を用いてさらに確認することを目的として,NR2Aサブユニットのノックアウトマウスを用いた生理学的・解剖学的な解析をおこなった。その結果、海馬錐体細胞シナプスの非対称性を再確認するとともに,介在神経細胞シナプスには非対称性が存在しないことを明らかにし、これを報告した(J.Neuroscience,25(40),9213-9226,2005)。 2)ivマウス神経回路の生理学的解析 ivマウスはモーター蛋白(dynein)をコードする遺伝子に変異を持つため、体軸の形成機構が正常に働かない。このためホモ接合型のivマウスからは内臓逆位と正位のマウスが1対1の確率で生まれる。我々はivマウス海馬神経回路の特徴を解析した。その結果、内臓正位、逆位ともにivマウスでは、海馬神経回路の左右の非対称性が消失していることが明らかになった。 3)ivマウスを用いた行動解析 ivマウスでは、内臓正位、逆位ともに海馬神経回路の左右の非対称性が消失していた。したがって、ivマウスを用いて行動解析を行うためには、対照群としては別系統のマウス、例えばC57BL6マウスを用いなければならない。そのためには、ivマウスの遺伝的なバックグラウンドをC57BL6に合わせる必要がある。現在、スピードコンジェニック法を用いて急ぎこの動物を作成中である。また、手持ちのivマウスを用いて行った予備的な行動実験において,ivマウスでは物体認知障害が示唆されたが、運動量に差は見られなかった。
|