研究課題
特定領域研究
本研究課題では、サル類のポジトロンCT (PET)を用いた機能画像研究により「論理思考」や「時間表象」・「間合い」といった抽象認知能力に関連する機能地図を手がかりに、その関連脳領域間での分子レベルの変化をマイクロダイアリシス法で定量し神経伝達物質と抽象認知との関係についてサル類を用いて明らかにすることを目的とした。本年度は、サルに時間的ズレを評価・識別し行動に反映させる課題を学習させその課題遂行中の局所脳血流をPETで計測した。ズレ時間設定を変更しズレ時間が長くなるにつれ局所脳血流の増加する脳内部位を抽出した結果、背外側前頭前野皮質、高次運動野、線条体、頭頂葉皮質、小脳などが関連することが示唆された。時間を脳内表象し、それに基づく行動タイミングを修正・更新し合目的行動に反映させる、抽象的かつ高度な能力をサルも獲得できること、この課題に含まれる要素は、「間合い」(空間・時間の係わりのバランスをはかる微妙な感性に基づくもの)や「時間感性」を操る能力の基礎となるのではないかと期待した。「間合い」効果を実現するには微妙な時間的差異を感じそれを行動に反映する必要があるからである。我々の先行研究で報告(2004)した「論理思考」(順序だてて段階的に問題解決する能力)課題に関連する脳機能地図ともよく一致したことより、サルにおいて論理思考や時間感性といった抽象認知能力には、上記の共通した脳皮質連関が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。並行して論理思考課題遂行中にPETでrCBF増加の認められたサル背外側前頭葉皮質(主溝周辺)から同一課題遂行中の細胞外ドーパミン濃度をマイクロダイアリシス法にて予備的に定量している。課題遂行開始直後にphasicな増加の可能性が示唆された。また、訓練サルでは定常状態(basal level)も増加している可能性が示唆され現在詳細に検討中である。さらに、受容体PET予備的研究では、上記機能画像で同定された特定脳領域でサルの学習に伴う脳内ドーパミン受容体分布変化の傾向も掴んでおり今後詳細な検討を予定している。これらpreliminaryな結果から、機能画像で関与・推定された特定脳領域とドーパミンとの関連性が示唆される。ヒトの前頭連合野の発達に果たすドーパミンの重要性が指摘されていることから(Diamond, 2003)もサルの高次脳機能の学習発達とドーパミンの関係性は大変興味深いと考えている。
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