研究概要 |
申請者が提案した新統計測度「局所変動係数Lv」によって,神経発火時系列パターンからそのスパイクを発生した細胞の特性を分類できることがわかった(Neural Computation 2003).さらにその後の研究によって,その情報が細胞の置かれた細胞層などに関する情報を含んでいることが明らかになった.これらの成果を受けて本研究では,まず経験ベイズ法などの現代的な統計手法を用いて「局所変動係数Lv」を上回る精度を有するデータ解析ツールの開発を行う.次に,このデータ解析ツールを使い,動物に待ち時間課題を学習させた実験データに適用し,実験データと比較検討できるような,時間を神経細胞活動のダイナミックスとして表現する理論モデルを提案する. これまでに実験データの提供を受けた領野は前頭連合野,補足運動野,前補足運動野,帯状回などであり,このうち補足運動野,前補足運動野,帯状回の細胞は,明瞭に2種類の発火特性を有する細胞群に分類できることがわかった.側頭葉の神経発火データの解析から,2種の神経細胞群は大脳皮質内のII-III層とV-VI層に偏在することが明らかになった(J.Neurophysiol.2005).またこれらのLv値は領野に応じて大きく異なっていることも明らかになった.スパイク統計性の違いをさらに系統的に調べるため,現代的な統計手法である経験ベイズ法に基づいた統計解析ツールを開発することに成功した(J.Physics A 2005).待ち時間課題については実験が進行中であり,実験データを待って理論考察を行う予定である.
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