研究概要 |
パーキンソン病やハンチントン病の病変主座である大脳基底核の入力部位は線条体であり、ここにはパッチ・マトリックスという解剖学的なコンパートメントが存在することが知られている。しかし線条体の入出力に関してこのコンパートメントでどのような違いがあるのかは未だ明確にされていない。例えば、入力に関しては各コンパートメントに特異的に入力する大脳皮質領野はわかっているものの視床からの入力パターンの違いはわかっていない。また出力に関しては教科書的にも、直接路・間接路のニューロンともにパッチにもマトリックスにも約半々の割合で分布しており、しかしパッチからの出力は黒質緻密部のドーパミンニューロンであろうという曖昧な記述しかなされていない。この曖昧さの理由として、従来のトレーサー実験では入力元の全てをラベルすることが不可能なこと、また逆に一つのニューロンのみをラベルできずニューロン単位での出力先を追えなかったことが挙げられる。この問題を克服するため、我々はまず入力に関しては、大脳皮質-線条体投射系と視床-線条体投射系の全てを、2種類のシナプス小胞性グルタミン酸トランスポーター(VGluT1,VGluT2)で識別しうることを先行研究(Fujiyama et al., Eur, J.Neurosci., 2004)で明らかにした。このVGluTに対する抗体を用いた免疫組織化学と、パッチに特異的に強く発現するμ-opioid受容体との免疫組織化学(Kaneko et al., 1995)を組み合わせ共焦点顕微鏡および電子顕微鏡による解析を行った。これにより、大脳皮質終末はパッチおよびマトリックスニューロンの樹状突起のスパインにほぼ同程度入力するのに対し、視床終末はマトリックスに比べパッチへの入力が少なく、マトリックスでは樹状突起のシャフトに、パッチではスパインにとシナプスの相手をも替えていることがわかった(Fujiyama et al., submitted)。
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