研究概要 |
複雑な脳神経系において機能的な神経回路を形成するために、回路形成過程を制御する軸索ガイダンス分子が存在する。軸索ガイダンス分子としては、スリット,エフリン,セマフォリン,ネトリンが報告されている。セマフォリンは現在までに20種類以上報告されている大きなファミリー分子で、主に反発因子として機能する。セマフォリンの新たな機能解析の目的で新規セマフォリンのクローニングを試みた。その結果、2種類のマウスセマフォリンのクローニングに成功した。Sema3GとSema6Dである。Sema3Gは脳特異的という発現様式ではないが、脳では小脳特異的に発現している。レセプターはニューロピリン-2だと考えられ、神経軸索に対する反発活性を持つ。生後、顆粒細胞層などに発現してくるので顆粒細胞の移動に関与していると考えている。Sema6Dは脳に高発現している。脳での発現は胎児から生体に至るまで同程度発現している。Sema6Dのノックアウトマウスの作成を計画している。また、最近モデル動物としてゼブラフィッシュにも注目して解析している。このため先ずゼブラフィッシュSema6Dのクローニングを試みた。クローニングに成功したが、この課程において、Sema6Eのクローニングにも成功した。Sema6Eはゼブラフィッシュ特異的なセマフォリンである。Sema6DとSema6Eは神経系特異的に発現している。Sema6Dは発生中において菱脳やレンズなどで、成体脳においては小脳に発現している。Sema6Eは発生中においては菱脳やレンズなどで、成体脳では縦隆起に発現している。Sema6D、Sema6Eともに神経軸索に対する反発活性が認められた。これらのことより、初期発生中の神経回路形成に関与している可能性がある。
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