Ca^<2+>チャネルは、Ca^<2+>を通過させるだけではなく、SNARE core複合体やCa^<2+>センサー蛋白と結合してシナプス小胞開口放出に重要な役割を果たしている。さらに、Ca^<2+>チャネルにはCa^<2+>/カルモジュリン結合部位があって、Ca^<2+>に依存した構造変化を起こし、チャネル機能が亢進したり、不活性化が増強されたりすることがわかってきた。このような現象は、Ca^<2+>チャネルが可塑的変化を起こし、シナプス前終末の可塑性に関わっていることを示唆する。 本研究では、幼若ラット(生後7日)の上頸交感神経節胞を単離し、神経成長因子存在下で数週間培養して形成したコリン作動性シナプスのシナプス前細胞核内に脳由来P/Q型Ca^<2+>チャネルα1サブユニットcDNAを直接導入して、シナプス前終末に正常なP/Q型Ca^<2+>チャネル、カルモジュリン結合domain (CBD)欠損ミュータントP/Q型Ca^<2+>チャネル、IQ domainミュータントP/Q型Ca^<2+>チャネルを発現させ、脳由来P/Q型Ca^<2+>チャネルの活性化パターンの違いによる神経伝達物質放出の変化を電気生理学的手法で機能解析することを試みた結果、 (1)Paired-pulse facilitationは、P/Q型Ca^<2+>チャネルIQ domainに依存する。 (2)頻回刺激によるfacilitationとdepressionは、P/Q型Ca^<2+>チャネルIQ domainとCBDに依存する。 (3)Augmentationは、P/Q型Ca^<2+>チャネルIQ domainに依存する。 (4)Post-tetanic potentiationは、P/Q型Ca^<2+>チャネルの活性に依存しない。 ことが明らかとなった。 これらの結果は、Ca^<2+>チャネルの可塑的変化に起因したCa^<2+>流入量の変化がシナプス前終末からの神経伝達物質放出の短期可塑性に直接寄与することを示唆する。
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