研究概要 |
RNG105ノックアウト(KO)マウスの解析から,以下の結果を得た。 (1)RNG105KO胎児の連続切片の病理組織染色をおこなった結果,病理組織学的に特に異常は見られなかった。しかし,体のサイズは全体的に野生型より小さかった。 (2)RNG105KO胎児脳の初代培養神経細胞は,野生型に比べて神経ネットワーク形成が有意に脆弱だった。興奮性シナプスマーカーであるsynapsin I, PSD95抗体染色により,KO神経ではシナプス形成も有意に減弱していることがわかった。 (3)RNA結合タンパク質G3BPがin vitroでRNG105とヘテロダイマーを形成し,RNG105のRNA結合特異性を制御していることを見いだした。また,in vivoでRNA granuleに共局在することも見いだした。G3BPKOマウスの解析が報告されており,その表現型がRNG105 KOの表現型と一致していることから,RNG105とG3BPは,共通の細胞機能に関与していると考えられる。 (4)RNG105が抑制性後シナプスタンパク質gephyrinと結合し,抑制性後シナプスに高頻度に局在することを見いだした。この局在は,興奮性後シナプスタンパク質PSD95との共局在より顕著に高かった。脳切片および初代培養細胞を抑制性シナプスマーカー(gephyrin, GAD6)および興奮性シナプスマーカー(PSD95, synapsin I)で抗体染色した結果,KO神経では抑制性シナプスが野生型よりも増強しており,逆に興奮性シナプスが減弱していることがわかった。以上の結果から,RNG105KOによって主に抑制性後シナプスにおける翻訳抑制が消失し,その結果抑制性シナプスが増強してネットワーク形成が脆弱になるというモデルを考えている。
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