研究課題
特定領域研究
一酸化窒素(NO)と一酸化炭素(CO)につぐ、第3のガス性生理活性物質としての硫化水素が神経のNMDA受容体活性を増強し、海馬長期増強(LTP)の誘導を促進し、グリア細胞にはカルシウムウェーブを誘起し、シナプス伝達を調節する可能性を見出した。本研究では、硫化水素の神経・グリア細胞間のシグナル伝達への関与について検討することを目的とする。実験方法としては、培養神経及びグリアをカルシウムグリーンで染め、硫化水素の投与や、電気刺激したときの細胞内カルシウム動態をハママツフォトニクスのCCDカメラ(C6790)、ARGUS HiSCAでイメージングとして捕らえ解析する。硫化水素は細胞内貯蔵カルシウムの関与は僅かで、主に細胞外からのカルシウムの流入を上昇させている。硫化水素がカルシウムウェーブを誘起するメカニズムとして、先ず想定されるものは、細胞膜表面に存在するカルシウムチャネルへの直接作用であり、各種のカルシウムチャネル阻害剤を使って検討した。その結果、膜電位依存性カルシウムチャネルが活性化されていることがわかった。セカンドメッセンジャーの関与として、硫化水素によるカルシウムウェーブの誘起へのIP_3の関与を検討した。培養グリア細胞において、硫化水素は用量依存的にIP_3量を増加し、硫化水素によって誘起されるカルシウムウェーブが阻害される条件、すなわち、ランタンやガドリニウムによってIP_3量が減少することが明らかになった。カルシウム揺動は神経、グリア両者に観測される。神経細胞の興奮によってグリアにカルシウム揺動が起こる場合と、逆に、グリアの活動によって神経細胞にカルシウム揺動が誘起される場合が報告されている。硫化水素の作用に着目すると、グリア細胞にはカルシウム揺動を誘起するが、神経細胞ではカルシウム揺動を抑制する。神経細胞のみをNMDAによって特異的に刺激した場合には、そのまわりのグリア細胞内のカルシウム濃度が上昇し、硫化水素の作用を抑制するランタンやガドリニウムによって、抑制されることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (6件)
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