研究課題
特定領域研究
X11Lはアルツハイマー病原因遺伝子の1つであるAPPの細胞質ドメインに結合し、β-アミロイド(Aβ)の生成を含むAPP代謝を抑制する。X11Lは分子中央部にあるPhosphotyrosine Interaction(PI)ドメインを介してAPPと結合するが結合・解離の分子機構は未解明であった。今年度、細胞を高浸透圧処理を行うことでX11LのAPPへの結合が惹起されることを見いだした。細胞外刺激が、細胞内のAPPとX11Lの相互作用を制御できれば、X11Lの活性化を標的としたAβ生成抑制剤の開発が可能となる。そこで、このX11L活性化の作用部位を解明する目的で、各種X11Lの欠失変異体を作製したところ、PIドメインよりもN-末端側の30アミノ酸を欠失したX11Lは活性化されないことが明らかになった。この領域内のアミノ酸をAla置換してAPPへの結合活性を指標にX11Lの活性化を測定したところ、Ser236とSer238の2つのアミノ酸がX11Lの活性化に必要であることを明らかにした。この2つのSer残基が細胞の高浸透圧刺激によりリン酸化される可能性を解明する目的で、30アミノ酸内のSerを全てAlaに置換したX11Lと野生型X11Lを細胞内で32Pを用いて放射標識し、ホスホペプチドマップを行い解析している。また、この領域に結合する機能未知なタンパク質も単離された。Ser236とSer238のAla変異は、高浸透圧刺激依存的な新規タンパク質のX11Lへの結合を阻害した。一般的に細胞の高浸透圧刺激で活性化されるストレスキナーゼカスケードは、この反応に関わっていない可能性が、特異的阻害剤を用いた解析から明らかになった。従って、X11LはAPP結合領域のN-末端ががリン酸化されるか、その領域に新規タンパク質が結合することによって、構造変換を起こし活性化すると考えられる。今後、この分子機構をさらに解明し、具体的な創薬ターゲットの絞り込みを行う。成果の一部は、特許発明として北海道大学から出願した(特願2005-139114)
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Journal of Biochemistry 137
ページ: 147-155
10017343017
Journal of Biological Chemistry 280
ページ: 42364-42374