研究課題
特定領域研究
従来パーキンソン病の病態は、黒質線条体系におけるドーパミン枯渇によるシグナルの低下として、神経伝達物質あるいは受容体調節の異常として検討されてきたが、線条体細胞内の酵素機能異常としての可能性がある。線条体ドーパミン受容体シグナルの標的酵素としてアデニル酸シクラーゼがあげられるが、同酵素には9種類のサブタイプが存在し、線条体には同部位に特異的に発現する5型サブタイプが知られている。我々の開発した5型ノックアウト動物では、線条体に限局したcAMPシグナルの欠損がみられ、協調運動の障害などの運動機能障害がみられ、さらにヒトパーキンソン病治療薬投与によって症状の改善がみられることから、パーキンソン病の原因としてのアデニル酸シクラーゼの酵素機能障害が考えられる。本申請ではその酵素機能異常とパーキンソン病の関連を明らかにするとともに、培養線条体細胞における同酵素の役割を検討した。1.数ヶ月に及ぶ試行錯誤の結果、2週令マウスより得られた線条体細胞の安定した初代培養に成功した。コラゲナーゼなどの酵素処理時間の調節により、胎児細胞とはかなり異なる条件を用いることにより、2週令マウスにおいても同様の培養が可能であることが、DAPIおよびMAP2染色によって確認された。2.線条体に発現するドーパミン受容体およびベータアドレナリン受容体をそれぞれドーパミン、イソプロテレノールで刺激すると、細胞内cAMP産生は後者による増加量が著名に多かった。しかし、その後の線条体細胞死を測定すると、前者の刺激によって著名に増加することがわかった。以上の所見から、ドーパミンによる細胞生存の制御メカニズムが推測された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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