研究概要 |
申請者らは、アルツハイマー病の"原因酵素"であるβセクレターゼ(BACE1)がα2,6シアル酸転移酵素を切断することを発見した(Kitazume et al.PNAS, USA, 2001:98,13554,JBC, 2003:278,14865)。この切断はBACE1ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスでも確認されている(Kitazume et al.JBC Online, 2004:M409417200)。当初この切断は、BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断とは全く独立した生理機能と考えていた。しかし極く最近、BACE1がシアル酸転移酵素を切断することによりAPP分子上のシアル酸量を変化させ、結果的にAPP代謝を調節することを見いだした。この調節機構は培養細胞で見いだされたものであり、in vivoでの検証が必要である。本研究は、生体内において、シアル酸を介したAPP代謝の調節を確認することである。また、BACE1によるAPP分子上のシアル酸化の調節を確認することを目的とした。 予備実験では、培養神経芽腫細胞(Neuro2a cells)にシアル酸転移酵素を高発現するとsAPPβ、sAPPαおよびAβの産生が2〜3倍に増加した。マウス個体を用いてAPP代謝に対するシアル酸付加の効果を検討した。α2,6シアル酸化されたsAPPβやAPPは、この糖鎖構造に特異的なレクチン(SNAレクチン>を使ってレクチンブロット法にて検出した。シアル酸化されているものの比率をAPPやsAPPβの総量に対して求め、シアル酸化の変動をモニターしたところ、細胞での実験と同様にシアル酸化に伴うsAPPの増加が検出された。すなわち、生体内におけるシアル酸を介したAPP代謝の調節が確認された。
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