研究概要 |
前年度に引き続いて、シロイヌナズナを舞台にRNAを介した遺伝子発現制御の分子機構を解析した。 マイクロRNAの合成に関係する因子DCL1,HYL1,SERRATEといった因子の細胞内での動態解析を行った。CFPあるいはYFP遺伝子と融合した各遺伝子をNicotiana benthamianaに発現させ、各タンパク質の単独での局在性、2分子間の共局在、BiFC法あるいはFRET法による分子間相互作用を検証していった。DCL1,HYL1,SEは共局在するのみならず、いずれの分子間も相互作用していることが確認された。このことからこの3分子はある種の構造体を構成し、マイクロRNAの前駆体とアクセスして、プロセッシングしていることが強く示唆された。またこの構造体は、細胞の核小体近傍に存在し、Cajal体と呼ばれる構造と類似していることが示された。 さらに、マイクロRNAが細胞質に移行し、作用する場についてもDCP1,DCP2,AGO1などの遺伝子産物に着目して解析を始めた。 Nonsense mediated mRNA decay(NMD)機構が植物にも存在し、UPF1,UPF2,UPF3遺伝子産物が関与することをすでに示している。これらの因子がどのような特徴をもったmRNAを異常なものとして認識するかについて検討した。種々の位置に終止コドンをもたせた人工mRNAを合成し、Nicotiana benthamianaに発現させ、発現後の安定性について解析した。その結果、3'末端から数百塩基以上上流、あるいは最後のエキソンーエキソンジャンクションの50塩基以上上流に、終止コドンをもつmRNAの安定性がNMDの作用をうけて下がることが明らかとなった。
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