研究概要 |
これまでに同定した32個のmRNA様非翻訳RNA候補(MRE)が、実際に非翻訳RNA(ncRNA)であるかどうかを検証するため、前年度に引き続き、ノーザン解析による時期特異的発現パターンの解析および近傍のタンパク質遺伝子との発現パターンの比較による検証を行った。MREのうち、保存性の高いORFを持ち、短鎖ペプチドをコードしている可能性が高いことが判明した2個と、ncRNAであることがほぼ確定した4個を除いた26個のncRNA候補遺伝子のうち、7個はイントロンRNAの分解産物であり、6個は近傍のタンパク質遺伝子の5'あるいは3'UTRの一部であると推測された。他の13個については近傍のタンパク質遺伝子とは発現パターンが一致しなかったが、ncRNA遺伝子であるかどうかについてはさらなる検証が必要である。これらの結果は、ゲノムプロジェクトで用いられている網羅的な解析では効率よくncRNAを同定することは困難であり、個々のncRNA候補遺伝子の実験的検証が必要であることを強く示唆している。 ncRNAであることがほぼ確定した4個(MRE3,MRE16,MRE31,MRE32)について、その生理機能を明らかにするため、MRE32,MRE33の転写領域を完全に欠失した系統、およびMRE3転写量域の3'側4分の3を欠いた系統をそれぞれ作成し、その表現型を解析した。これらの系統は全て生存し、生体において必須な遺伝子ではないことが示唆されたが、MRE32の欠失変異系統は成虫への脱皮時期が顕著に遅れることが明らかとなり、発生のタイミングに関わる何らかのメカニズムに関与していることが示唆された。また、cDNAアレイを用いた遺伝子発現プロファイルの解析の結果、約145個の遺伝子が顕著な発現量の変化を見せることが明らかとなり、MRE32がこれらの遺伝子の発現制御に何らかの形で関与していることが考えられた。
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