研究概要 |
eIF3は真核細胞の翻訳因子では最大(650kDa)の翻訳開始因子であり、11個の異なるサブユニット(eIF3a, eIF3b, eIF3c, eIF3d, eIF3e, eIF3f, eIF3g, eIF3h, eIF3i, eIF3k, eIF3l)から構成されている。eIF3は翻訳開始に必須であり、中心的役割を果たしている。特にストレス状況下における翻訳制御に関わっていることが知られている。しかし、各々のサブユニットが何をしているのか、どのサブユニットがeIF3のコアを形成しているのか不明であった。そこで我々はヒトのeIF3の再構成を行い各サブユニットの解析を行った。 方法はバキュロウイルスによる共発現システムを用いた。三つまたは四つのサブユニットを発現するバキュロウイルスを三つ作製した。これらのウイルスを昆虫細胞に同時に感染させることにより、11個のサブユニットを同時に細胞内で発現させ、細胞抽出液から組み換え体eIF3を精製した。このようにして得られたeIF3はHeLa細胞などから精製された内因性eIF3と同じ組成と同じ活性を有していた。 次にどのサブユニットがeIF3の構造と機能に必要なのかを調べた。任意の一つのサブユニットを欠損したeIF3の作製を試み、その活性を測定した。11個のサブユニットの中で、eIF3d, eIF3g, eIF3i, eIF3k, eIF3lサブユニットはそれぞれ欠損させてもeIF3は構造を維持し、また活性にも大きく影響を与えなかった。従って、これら五つのサブユニットは必須でないことがわかった。残りの六つのサブユニットeIF3a, eIF3b, eIF3c, eIF3e, eIF3f, eIF3hは欠損させることができなかった。最後にこれらの六つのサブユニットで活性のあるeIF3を作製することに成功した。
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