研究概要 |
シロイヌナズナの細胞壁構築に関わる32ファミリー,765遺伝子を対象とした包括的な発現解析により,花茎基部の伸長停止域で特異的に発現し,荷重刺激に応答する16種の遺伝子をこれまでの研究により同定した。これらの遺伝子について,T-DNA挿入変異体による機能解析と,pro::GUSおよびreal time RT-PCR等の方法による発現解析を進めた。このうち,グリシンリッチタンパク質(GRP)をコードする遺伝子の欠損変異体では茎頂直下の花茎組織の局部的な枯死,主軸の伸長不全、側枝数の顕著な増加,などの明確な形態上の表現型が見られた。そこで,この遺伝子に注目して,機能と発現の解析を行った。 表現型が養分投与により一部回復すること,Promoter::GUSの発現部位とmRNAがいずれも,基部の維管束に局在することなどから,変異体の機能欠損は維管束機能不全に起因する可能性が示唆された。ついで,特異性の高いペプチド抗体を作成し,タンパク質局在を解析した。その結果、木部柔細胞で遺伝子が発現したのち、分泌されたタンパク質は成熟した原生木部に移行・沈着することを見いだした。この結果は,分泌後の細胞壁中でのタンパク質の輸送制御の存在を示唆するもので重要な知見であると考えられる。その分子過程について現在解析を進めている。 また,詳細な機能解析を行うために,相補実験を進めると共に,RNAiによるノックダウン変異体と過剰発現体の表現型の解析を進めている。これまでの解析で異所的な過剰発現により発現部位での巨視的形態異常が確認できた。
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