研究課題
特定領域研究
C型肝炎ウイルス(HCV)は高率で、脂肪肝、肝硬変、肝細胞がん発症を起こす原因ウイルスで、本邦においても200万人のキャリアがおり、現在においても肝細胞がん死亡者の約70%がHCV感染に起因する。HCV感染による病態の進行に密接に寄与する因子の一つとして、ウィルスゲノムにコードされたコア蛋白質が挙げられる。以前の我々の研究から、コア蛋白質を酵母細胞に発現させると小胞体表面に分布し、コアのC末端疎水性領域がプロセスされるなど哺乳動物細胞と同様な存在様式を示すことを明らかにしている。本研究では、HCVコア蛋白質が細胞への影響を出芽酵母細胞を用いて解析し下記の成果を得た。1.(毒性発現機構)コア蛋白質を酵母細胞に誘導高発現による酵母増殖阻害を解除する因子として、4500の遺伝子欠損株ライブラリースクリーニングにより、複数の細胞質分子シャペロン、ミトコンドリア関連因子などの欠損がコア蛋白質による増殖阻害に寄与していることを明らかにした。酵母HSP90(HSC82)はHCVコアの安定化に寄与することを明らかにした。2.(細胞応答)コア蛋白質発現により上昇する遺伝子の3分の一がunfolded protein response (UPR)、ER-associated degradationに関する遺伝子群であることを、トランスクリプトーム解析により明らかにした。実際にコア蛋白質発現によりHAC1 mRNAのスプライシングが誘導されることが判明した。3.(脂質過酸化)HCVコア蛋白質による脂質過酸化の促進コア蛋白質を酵母内で発現させると不飽和脂肪酸の過酸化が促進されることを見出した。以上の本研究により、酵母細胞においてもHCVコアはUPRを誘導し、脂質の過酸化を促進するなど哺乳動物肝細胞で観察されている現象が起こることを示し、この現象に関与する因子を洗い出すことに成功した。今後、これらの因子を介したUPRおよび脂質過酸化のメカニズムの解明することで、ヒト肝細胞におけるHCVの病態発症機構の解明につながると考えられる。
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