研究概要 |
培養細胞にVCPの機能欠失体やポリグルタミンを発現すると、細胞は特徴的な空胞変性像を示し細胞死に至る。このとき、VCPは変性タンパクの凝集を集合させる作用と分解させる作用の2面性を持ちうることを、培養細胞における変性蛋白質の誘導系を構築して示した。 VCPおよびそのコファクターであるp47,Ufd1,Np14の特異的抗体をそれぞれ作成し、成体マウスやヒト癌組織における発現をそれぞれ検討した。腸管上皮細胞・気管支上皮・腎尿細管といつた物質の分泌や吸収に重要な働きをしている細胞で強い発現が見られた。蛋白質の分泌や物質の取り込みなどの細胞膜が関与した機能にVCPとコファクターの系が重要な働きを行っていると考えられ、糖尿病や代謝疾患においてもVCPを標的とした治療戦略の有効性を示唆している。 様々な腺癌・扁平上皮癌でVCP発現の亢進が認められたが、同様な亢進をp47についでも確認した。一方、Ufd1,Np14に関しては、癌の種類によって発現の差が大きいことが分かった。また、Ufd1,Np14は協調的に作用することが報告されているが、この2者が必ずしも同じような発現パターンを示さないことは癌細胞で起こっているタンパク質品質管理機構の破綻を示唆するようで非常に興味深い。RNAi法でHeLa細胞内在性のUfd1,Np14,p47をノックダウンしても、VCPのノックダウンで見られる細胞周期・細胞死に関する強い表現型は観察されなかった。このことから、細胞周期の進行にはVCP単独もしくは別のco-factorが関与していることが示唆された。
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