研究概要 |
【1】小胞体トランスロコンは予想外に幅広いアミノ酸配列を識別して膜貫通配列の配向を決定する:シグナル配列が膜に進入する時点で配向を決定するポリペプチド鎖上の正荷電アミノ酸残基が,疎水性配列から25残基離れた場所からも作用できること,正荷電残基はリボソームから外に出て作用していることを明らかにした。トランスロコンは予想以上に広い範囲のアミノ酸配列を識別していると考えられる。 【2】小胞体トランスロコンは2本のポリペプチド鎖を許容できる:ストレプトアビジンに結合するベプチドタグ(SBP-tag)を使って,ポリペプチド鎖のトランスロコン内での移動を停止・再開できる実験系を確立した。これを用いて,トランスロコンには2本のシグナル配列と2本の膜透過途上の親水性ポリペブチド鎖を収容できることを明らかにした。収容されたポリベプチド鎖は,ストレプトアビジンから解離後速やかに膜の反対側に移行し,膜内で正常に配向を決定できた。トランスロコンはきわめて柔軟で,多数のポリペブチド鎖を収容できると結論した。 【3】シグナル配列がポリベプチド鎖の膜透過を駆動する:力学的アンフォールディング特性が詳細に判明しているタイチン127ドメイン(及びその変異体)をアミノ末端に付加したモデル蛋白質を用いて,N-末端ドメイン膜透過駆動作用を解析した。シグナル配列のトランスロコン内への進入がN-末端の膜透過を引き起こす主要な駆動要因であることが明らかになった。シグナル配列が,ポリベプチド鎖の小胞体への標的化や配向決定にかかわると同時に,駆動の原動力になっていることを示した。
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