研究概要 |
私達はN型糖鎖を識別するユビキチンリガーゼSCF^<Fbs1>を見出し、生体における機能解析を行なっている。SCF^<Fbs1>はSkp1, Cullin1, Roc1, F-box蛋白質の4個の蛋白質からなる複合体として存在するSCF型ユビキチンリガーゼのひとつであり、基質認識サブユニットであるF-box蛋白質がFbs1という糖鎖結合蛋白質であり、蛋白質の品質管理機構のひとつである「小胞体関連分解」の過程で機能している可能性を報告してきた。 F-box蛋白質はヒトでは約70種類のものが存在するが、その多くがSCF型ユビキチンリガーゼを形成する。しかし、Fbs1は他のF-box蛋白質と同程度にSkp1と結合してくるものの、他のF-box蛋白質とは異なりその複合体にCul1はほとんど含まれていないことを見出した。これは、Fbs1のF-boxドメインと基質結合ドメインをつなぐわずか26アミノ酸のリンカー配列がCul1とSkp1の結合を阻害しているためであった。さらに詳細に検討した結果、Fbs1のリンカー配列には小胞体上でしかSCF複合体を形成できない何らかのメカニズムが存在することが判明した。 これまでの研究で、Fbs1にはアグリソームと呼ばれる凝集体の形成阻害活性を見出している。そこで、Fbs1に糖蛋白質の凝集体形成阻害活性があるかどうかを試験管反応で調べた。その結果、Fbs1はSCF複合体、Skp1との二量体、さらにFbs1単体でも凝集体形成阻害活性が認められることがわかった。この活性は、基質の糖鎖依存的さらにFbs1のN末端のPドメイン依存的反応であった。Fbs1はこれまで考えられてきた小胞体関連分解におけるユビキチンリガーゼとしての機能よりもむしろ、神経変性疾患などで見られる凝集体の形成を阻害する機能がある可能性を示唆するものである。
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