研究概要 |
近年,清潔な環境を維持するという観点から,高い酸化力を有する二酸化チタンを用いた光触媒反応システムが注目されているが,実使用環境を想定した場合,室内照明光照射下でいかに高い殺菌活性を発揮させるかが重要な課題となる.これまで,二酸化チタン光触媒の室内光照射下での低い殺菌効率を向上させるためには,銅成分添加によるフェントン様反応を組み合わせることが効果的であることを示してきた.光殺菌効率におよぼす環境因子について調べたところ,反応液中に含まれる無機塩が殺菌活性に大きな影響をおよぼすことが示されたため,ファージ不活性化における銅および無機塩の共同効果について検討した. 白色蛍光灯照射下,10μMのCuCl_2およびNaCl 100mMをTiO_2薄膜上に添加し,ファージ不活性化実験を行った.TiO_2薄膜上にCuCl_2のみを添加した場合,添加しない場合と比べて活性が若干向上した.さらに,CuCl_2とNaClを同時に添加した場合,TiO_2薄膜の活性が著しく増加することが分かった.また,TiO_2薄膜の代わりにガラス面を用いた場合にはファージ不活性化効果は認められず,活性の向上はCuCl_2,NaCl, TiO_2および光の4要素が必要であることが示された. さらに,NaClのうちNa^+とCl^-のどちらかが活性向上に寄与しているかを検討するため,KClまたはNaNO_3と10μMのCuCl_2を添加してファージ不活性化実験を行った.KClを添加した場合,NaClを添加したときと同様の不活性化速度定数の向上が見られたが,NaNO_3を加えた場合,NaClやKClを添加したときにみられたような不活性化速度の増加は認められなかった.以上のことから,反応液中に塩化物イオンが存在することでCu^<2+>がCu^+に還元され,それによってフェントン様反応が促進された結果,高い不活性化効果が得られることが明らかになった.
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