研究概要 |
すざく衛星(Astro-E2)は2005年7月の打ち上げ以来、現在まで順調な運用をつづけている。本研究で使用した搭載検出器である硬X線検出器広帯域全天モニタ(Suzaku-WAM)も我々開発チームのメンテナンスもあり、大きな問題なく順調に動作し続けており、すでに年間100個以上、計200個以上のガンマ線バースト(GRB)を検出してきた。これは打ち上げ当初に予想されたものと同程度であり(現在活躍中の検出器としても最大規模である)、当初の予想通りの性能がでていることが実証された。Swift衛星搭載BAT検出器などで位置がわかったものについては、エネルギースペクトルの解析を行い、GCNと呼ばれる速報を世界に向けて発信した。これまで35個のGCNを発信しており、その存在を世界の中で確固たるものとした。中にはMeV領域に輻射をもつものもGRBO70125,GRBO60429などあり、放射エネルギーのピークが1MeVも超えるものもでてきた。これらはBATSEなど過去の衛星との結果と比較する上で非常に興味深い。これらWAMに関する現状の報告は、5つの国際会議で発表された。 WAMは周囲を衛星上の機器に覆われており、入射ガンマ線が吸収や散乱の影響を受けてしまう。そのため、エネルギー応答関数の構築が極めて困難である。我々は衛星上を精密に模擬して、モンテカルロシミュレーションを行い、応答関数を構築し、地上実験である特定の方向について実証してきた。さまざまな方向についての検証は、GRBを使って機上で行う必要がある。本年度は新たに国際協力としてSwift衛星BAT検出器チーム、Wind衛星搭載Konus検出器チームとの共同のもと、同時に検出されたGRBを用いて、相互較正を行うこととした。そのための最初の打ち合わせをNASA Goddard Space Flight Centerで行った。その後、23個のGRBのデータを交換し、現在の応答関数がほとんどの方向でフラックスについて20-30%程度で測定できていることがわかった。これは十分な精度といえる。これらの結果を用いて、短い継続時間をもつGRBの特性について調査した論文を投稿し、受理されている(Ohno et al. PASJ 2007)。現在はさらに精度を上げるべく機上較正を行っている。 さらに、複数衛星を用いてその到来時間の時間差を用いて位置決めを行う惑星間GRBネットワークにより、6個のGRBの位置決めを1日後程度で速報してきた。中でもGRBO70125はX線や可視光での対応天体が発見され、赤方偏移が決まるなど大きな成果をあげている。現在、論文にまとめているところである。
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