研究概要 |
平成18年度は,17年度の研究において改良してきた可視映像の解析をさらに進め,阿蘇山の中岳,有珠山,浅間山などにおいて撮影した映像の解析を行った.特に阿蘇山中岳の湯だまりの噴湯現象については,噴湯による白濁の程度を輝度の時間変動として抽出する方法,噴湯による波が湯だまりを伝播する状態を輝度の時間変動として抽出する手法を開発した.その結果、噴湯現象の時間変動には特徴ある振動数が存在すること,その振動数は,火山性微動の振幅が大きいほど高周波になることが明らかとなった.また同時に,湯だまりの水位が低いほど高周波となることも明らかとなった.噴湯は湖底の噴気孔から噴出する火山ガスが泡として成長し,噴気孔の口径とほぼ同じ大きさとなった時点で湖底から放出されることによって生じている.したがつて,噴湯現象の振動数は,泡の放出頻度を代表していると考えられる.上記の関係は,地下深部から放出される火山ガスの量が多いほど微動振幅が大きくなると同時に,泡の放出頻度が高くなること,湖水の蒸発が促進されることによって生じていると解釈される.噴湯現象は,世界中の多くの火山・地熱地域で観察されているが,その時間特性を定量的に検討した例は少なく,火山性微動の振幅や湖水の高さなどの火山性流体の放出量との関係が定量的に明らかにされたのは,はじめてのことである. また,有珠山など他の火山においても噴出の時間特性を解析しており,複数の火山において基礎資料を増やすことができた.この資料は,将来,より多くの火山において調査が行われた時に,より普遍的な関係を検討する際の突破口になると思われる.
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