研究概要 |
本研究の目的は,高精細な4次元医用画像に対する実時間処理を実現することである.この実現のために,GPUやPCクラスタを用いた高性能計算に関して研究してきた.平成18年度の成果として,(1)4次元ボリュームレンダリングの高速化,(2)モルフォロジー演算の高速化,および(3)GPU装備のノートPCによる2次元/3次元剛体位置合わせの性能評価および精度評価について述べる. (1)512×512××295ボクセルの肺データに対しては,秒間あたり5フレームの性能を達成でき,ほぼ実時間の可視化を実現できている.残りの小規模なデータに対しては30フレームに到達するものもある.一方,技術を何ら用いない安易な実装では,概ね1/5の性能であることから,1台のPCであってもディスク,CPUおよびGPUの多重化,およびデータ圧縮やパイプラインなどの工夫により目標性能を達成できた. (2)GPUにより数秒程度の実行時間をモルフォロジー演算に対して達成した.集約型は大きい元画像に対して高速であり,ばらまき型は大きい構造要素に対して高速であることを示した. (3)64個のCPUを持つPCクラスタは,位置合わせに要する計算時間を5分から15秒,15分から58秒に短縮できた.一方,GPUはほぼ30秒以下の実行時間で位置合わせを完了できている.この実行時間は術中用途に耐える短さであるため,提案手法は位置合わせを前処理とする様々な手術支援に貢献できる.PCクラスタが管理や運営などの維持コストを必要とするのに対し,GPUではノートPCを1台のみ手術室に持ち込めばよいので,高性能計算環境を導入するときの敷居は格段に低く,実用性が高い.
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