研究概要 |
本研究の目的は,胸部マルチスライスCT画像における病巣の経時変化を強調することが可能な経時的サブトラクション画像の手法を開発し,結節状陰影の検出を目的としたコンピュータ支援診断(CAD)に応用することである.本研究に関する平成18年度の研究実績の概要は次の通り. 1.アーチファクトの少ない経時的サブトラクションアルゴリズムの開発 昨年度に開発したアルゴリズムを基に主に次の改良を行った. 1)昨年度までは,ローカルマッチングで得られたシフトベクトルに対してElastic matchingを適用していたが,グローバルマッチングとローカルマッチングから得られた合成シフトベクトルに対してElastic matchingを適用することで,グローバルマッチングでの誤差を修正することが可能となった. 2)シフトベクトルに対応した変形過去CT画像の各ボクセル値に対して,現在CT画像とのボクセルマッチングを行った.本研究で新たに開発したボクセルマッチングとは,変形過去CT画像の注目ボクセルに対応する現在CT画像の近傍領域から,最も類似したボクセル値を探索し,その注目ボクセルのボクセル値を置き換える処理である.ボクセルマッチングにより,拍動の影響などで,肺血管の1ボクセル程度のずれも整合させることが可能となり,極めてアーチファクトの少ない経時的サブトラクションCT画像が得られ,結節状陰影などの経時変化が大きく強調されるようになった. 2.画像データベースに含まれている結節状陰影の経時変化を有する20症例に本手法を適用して,ヒストグラム分析によるアーチファクトの評価を行ったところ,全症例に対してボクセルマッチングの大きな効果が確認された. 3.アーチファクトが極めて少ない差分画像が得られるために,単純なしきい値処理だけで,新たに出現した結節状陰影の検出が可能となり,CADへの応用が強く示唆された.
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