研究概要 |
本研究は抗菌・抗真菌・抗ウイルス活性を有する核酸系天然物を高効率的に合成すること、誘導体合成ならびにその構造活性相関を行うことを目的とし、以下の核酸系天然物に関する合成研究を行った。 1.Caprazamycin類:ウリジンから5工程で得られる(S)-6'-(S)-5'-グリシルウリジンに対してペンチリデン基の立体障害を利用したリボシル化反応を行うことで、望みとする5'-O-β-リポシドを高立体選択的に得た。このβ-リポシドを6工程で環化前駆体に変換し、還元的アミノ化反応によりジアゼパノンを構築した。最後に脱保護を行いcaprazolの初の全合成を達成した。さらに抗菌活性を有するFR-900493の全合成も達成し、その全絶対立体配置を決定した。本合成法を創薬研究へと展開すべく、caprazolのコンフォメーション解析を行い、ジアゼパノン部をジケトピペラジン構造へと単純化した新規誘導体を設計・合成した。 2.Tunicamycin類:Tunicamycin類の分子機構とβ-1,4-ガラクトース転移酵素のX線結晶構造を用いたドッキングスタディーの結果を考慮して、11'-置換tunicanminyluracilを設計・合成した。β-1,4-ガラクトース転移酵素の阻害活性を検討した。その結果、11'-フェニルチオ体が中程度の阻害活性を有することを明らかにした。 3.Guanofosfocin類:guanofosfocinは熱・酸化条件に不安定な物質であり、ジリン酸化アセタール構造がその要因と考え、その一つの酸素原子を炭素原子に置換した安定等価体を設計した。マンノースより合成したリチオ体のグアノシン5'-アルデヒド体に対する付加反応により得られた付加体を環化前駆体に変換した。光延反応による環化反応を検討したところ、目的とする8-O-環化体は得られず、7-N-環化体が得られた。
|