研究概要 |
1.糖とチオール付加反応生成物の同定と生理活性評価: ^<13>Cラベル化グルコース、フルクトースとシステイン、グルタチオンなどの生体内チオールと生体内条件下でインキュベートして生成物を同定した。グルコースとグルタチオンでは、中性状態でインキュベートすると、グルコース1位とシステイン残基のチオールとアミノ基がチアゾリジンを形成し、その後グルタミン酸が加水分解されて安定化することが判明した。この化合物を各種細胞に供したが、特に活性は認められなかった。一方、フルクトースとグルタチオンはチアゾリジンを形成しにくく、ケトースとは体内でも反応しにくいことが推側された。グルコースの場合、このようなアダクトを容易に形成した。これまで、システインとグルコースのアダクトは血液中から同定されているが、グルタチオンのアダクトは追求されてない。このin vitroの反応性から考えて、血中でもシステニルグリシンのグルコースアダクトは存在するものと考えられた。 2.酸化蛋白質の架橋反応生成物の解析と活性評価: 卵殻膜リジルオキシダーゼは蛋白質架橋反応に関与しているのでその反応特性から調べた。その結果、本酵素はアミノ酸のD, L体の区別なく反応し、アミノ酸のαアミノ基には反応しないで、Lys, Ornなどの1級アミノ酸のみに反応することがわかった。この酵素を用いて、蛋白質酸化モデルのα-N-acyl adipic semialdehyde(AAS)およびα-N-acyl gultamic semialdehyde(GGS)を調整し、各種細胞に供したが特に活性は認められなかった。一方、無保護のD-オルニチン(Orn)に本酵素を反応させると、複雑な混合物を与えたが、NMR解析の結果、プロリンなどの代謝物である、D-pyrroline-5-carboxylate(P5C)を主成分として与えることがわかった。また、この化合物は非常に弱いながら(IC_<50>0.1mM程度)caspase-3を阻害することがわかった。L-Ornからも同じ反応条件でNMRで全くD体と同じ生成物が示されたが、L体はこの活性を示さなかった。このことからCaspase-3阻害活性はD-アミノ酸代謝物の未知の生理活性であることが示唆された。 3.蛋白質の酸化程度を定量する方法の確立と応用 蛋白質酸化で生じるAAS, GGSをp-aminobenzoic acidで蛍光ラベル化し、イミンを還元後に蛍光HPLCで定量する方法を完成した。
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