研究概要 |
当研究室独自に構築した未利用天然物ライブラリーを用いて,疾患関連シグナル伝達分子を標的とした天然物探索研究を行った.その中から,1)TRAILシグナル増強作用をもつ天然物,2)Wntシグナルを標的としたスクリーニング,の二つに関する本年度の研究成果を以下に記す. 1)タイ東北部産のショウガ科植物Curcuma parvifloraより数種の新規炭素骨格をもつ一連のセスキテルペン二量体型成分を単離した.これらは数種の培養腫瘍細胞に対して顕著な細胞増殖抑制作用を示した.主成分parviflorene FについてDNAマイクロアレイ解析を行い,HeLa細胞の癌疾患関連遺伝子886個の発現に及ぼす影響について検討した.その結果,発現量の変化が示唆された4つの遺伝子についてさらにリアルタイムRT-PCR法により定量的遺伝子発現解析を行ったところ,parviflorene Fはアポトーシスに関与するデスレセプターの一つであるTRAIL-R2遺伝子AF016266の発現を4.9倍誘導することが判明し,本化合物の細胞増殖抑制作用とアポトーシス誘導作用との関連が示唆された. 2)大腸癌の形成に深く関与することが知られているWntシグナル伝達系に注目し,その転写因子の一つであるTCF/LEF複合体の転写活性を阻害する天然物のスクリーニングを行った.まず,大腸癌細胞株SW480にTCF/LEF結合領域を有するルシフェラーゼレポータープラスミドを導入し,一過性発現させた細胞を用いた予備的なスクリーニングを行い,ケルセチンが30μMの濃度でTCF転写阻害活性を示すことを明らかにした.また,同様のレポータープラスミドを導入した安定発現細胞の樹立に成功した.従って,この細胞を用いた当研究室保有の天然物ライブラリーに対するスクリーニングが可能となった.
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