研究概要 |
多不斉中心の新たな構築法の開発を目指し、芳香族性官能基の触媒的不斉水素化に関する研究を行った。 本研究に先立って開発した、不斉配位子PhTRAPのロジウム錯体によるインドールの触媒的不斉水素化を基盤にしてピロールの触媒的不斉水素化の開発を行った。当初、PhTRAP-ロジウム触媒を利用してピロール-2-カルボン酸エチルの触媒的不斉水素化を試みたが、様々な反応条件、添加物、窒素原子上の保護基を検討したものの、目的生成物であるピロリジンを最高24%eeでしか得ることができなかった。そこで、各種不斉触媒を用いてこの不斉水素化を検討したところ、不斉配位子(S,S)-(R,R)-PhTRAPと[RuCl_2(p-cymene)]_2から調製される光学活性ルテニウム錯体を不斉触媒とすることにより、ピロール-2-カルボン酸エチルの触媒的不斉水素化を64%eeで進行させることに成功した。さらに、エステル置換基をエチルからメチルに変えることにより、S体のN-Boc-プロリンメチルエステルを76%eeで得た。この成果は、ピロールの触媒的不斉水素化で有為な立体選択性を実現した世界初の例である。 また、この光学活性ルテニウム錯体を触媒とすることにより、窒素原子上をBoc基で保護したインドールの触媒的不斉水素化を高エナンチオ選択的(最高95%ee)に進行させることに成功した。また、このルテニウム触媒を用いることにより、従来のロジウム触媒では進行しなかった2,3-二置換インドールの不斉水素化が進行し、72%eeで目的生成物を与えることがわかった。
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