研究概要 |
L-リジン、L-プロリン等の入手容易な光学活性アミノ酸の非活性メチレンを活性化して水酸基等の官能基を立体選択的に導入し、医薬品等に役立つ生体活性分子を合成するのが本研究の目的である。平成17年度は、カルボキシル基、2つのアミノ基を保護したL-リジン誘導体を先ず電極酸化によってα',β'-不飽和L-ピペコリン酸エステルに変換し、これを鍵中間体としてそのピペリジン環のβ'位等への立体選択的水酸基導入を検討した。得られた成果は以下の通りである。1)N-保護α-置換ピペリジンを電極酸化によりN-保護α',β'-不飽和-α-置換ピペリジン(A)に変換し、酢酸溶媒中でAを直接電極酸化することによってα',β'位をジアセトキシ化、次いでα'位アセトキシ基を還元除去してN-保護β'-アセトキシ-α-置換ピペリジン(B)を得た。Bはβ'位アセトキシ基とα-置換基との関係においてcis/transの混合物であり主生成物はtrans体であった。一方、Aを臭素イオンの存在下に間接電極酸化し、その酸化生成物のα'位置換基を還元除去するとN-保護β'-ヒドロキシ-α-置換ピペリジン(C)を得た。Cの立体化学はほとんどcis体であることがわかった。2)α',β'-不飽和L-ピペコリン酸エステルにこの間接電極酸化を適用してβ'-cisヒドロキシ-L-ピペコリン酸エステルを選択的に得ることに成功した。3)α',β'-不飽和L-ピペコリン酸エステルを2段階でγ-アセトキシ-α',β'-不飽和-L-ピペコリン酸エステル(D)に変換し、Dを酢酸中で直接電化酸化することにより得られる生成物のα'位置換基を還元除去すると、γ-アセトキシ-β'-不飽和-L-ピペコリン酸エステルが立体選択的に得られた。これらの成果はL-リジンのγ,δ位非活性メチレン基を活性化、これらの位置に水酸基を立体選択的に導入できたことを示すものである。
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