研究概要 |
多様な構造と生物活性を有するトリテルペンの基本骨格を決定するスクアレン環化酵素に、化学的に合成した人工基質を作用させることにより、在来見られない新規骨格を有する超天然型ステロイドの人為的な生産を試みた。その結果、今回、ヘテロ芳香環を、C_<20>イソプレン側鎖に結合させた一連の人工基質をプローブとして、酵素に作用させることにより、インドール及びピロール含有非天然型新規4環性及び5環性化合物の合成に成功した。 また、既に我々は、C_<35>合成基質アナログから、これまでに例のない6環性の骨格を有する超天然型ステロイドの酵素合成に成功している(JACS 124, 14514, 2002)。今回さらに、C_<40>基質アナログを合成、プローブとして酵素に作用させることにより、7環性の骨格を有する超天然型ステロイドの創出に着手した。現在、酵素反応生成物をTLCや逆相HPLCにより分離精製の後、現在各種NMR、GC-MSなどを測定して構造解析を急いでいる。 最後に、信州大学医学部森政之先生との共同研究により、モデルマウスにおける白内障発症の原因が、オキシドスクアレン環化酵素の点変異によることを明らかにした。白内障惹起機構の詳細については今後の研究が待たれるが、変異導入による酵素活性の変化や微量に生成する異常ステロイドが、白内障に限らずあらゆる病態の一因となることは想像に難くない。酵素活性中心構造の微妙な変化により、基質や反応生成物の特異性が大きく変化することは周知の事実であり、また、何よりもステロイドは、ホルモンなど細胞内情報伝達において中心的な役割を演ずる生体機能分子である。今後さらに詳細に検討を進める予定である。
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