研究概要 |
本研究では,「進化分子工学」と「有機合成化学」とを融合させ,新しい「生体機能分子」の分子設計手法を開発する。すなわち,安定な立体構造(α-ヘリックスなど)を持つペプチドから構成される独自ファージ・ライブラリーを構築し,標的タンパク質(サイトカイ受容体など)に結合するペプチドを検索する.このライブラリーから得られる受容体結合性ペプチドは強固な立体構造を持つので,活性アミノ酸残基の3次元構造情報が容易に入手することができ,この情報をもとに低分子の「生体機能分子」の設計を行う。 1.ファージ・ライブラリーのスクリーニング:ヘリックス・ループ・ヘリックス構造ペプチドからなるファージ・ライブラリーを顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体に対してスクリーニングし,受容体結合性のファージ粒子を単離したのち,ペプチドのアミノ酸配列を決定した。 2.活性残基の立体構造:ペプチドのアラニン・スキャンニングを行い,受容体結合に関与する活性残基の同定を検討したところ,Leu28,Lys29,Glu32が結合の関与していることが判明した。さらに,Leu3およびLeu28を15Nラベルし,受容体存在下,核磁気共鳴(HSQC)スペクトルを測定したところ,C端ヘリックス外側が受容体と相互作用していることが判明した。 3.非ペプチド性テンプレート分子の検索:以上の事実から,受容体結合における,活性残基の立体構造情報が得られた。そこで,この情報をもとに低分子化合物データベースをバーチャルスクリーニングしたところ,テンプレート分子が検索された。 4.受容体結合性低分子化合物の合成:テンプレート分子の適切な位置に,活性残基の側鎖に対応する官能基を移植し,非ペプチド性低分子を合成した。
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