研究課題
特定領域研究
環状リゾホスファチジン酸(cPA)は生体内に普遍的に存在するリン脂質の一種である。従来はリゾホスファチジン酸(LPA)がリン脂質メディエーターと考えられてきた。本申請者らはLPAとcPAがともにリゾホスファチジルコリン(LPC)から酵素的に生成され、さらに両者は相反する生理作用を示すことを明らかにしてきた。これらの事実はLPAとcPAがカップルした情報伝達系が存在することを示唆している。本研究は、この未解明の情報伝達系を解明することを目的とし、そのための第一歩としてcPAの生体内標的タンパク質を探索・特定することを試みた。本年度は、まず初めに3-O-カルバ誘導体、および2-O-カルバ誘導体の合成を行った。3-O-カルバ誘導体は既に合成法を確立しており、生物活性評価の比較のため、種々のアシル側鎖を導入した類縁体の合成を行った。また、2-O-カルバ誘導体に関しては、リパーゼを用いた不斉アシル化を利用して光学活性対の合成を行った。また、分子プローブとしては、ビオチンを導入した分子プローブの合成を試みた。最後に環状リン酸化を行う方法では目的を達することができなかったが、アジドを末端に有するリン脂質とアセチレンを末端に有するビオチン誘導体の環化付加によって目的の化合物を合成することができた。今後は本分子プローブを用いて分子標的を探索する計画である。一方、カルバ誘導体がLPAの産生を促進するAutotaxinの活性を抑制することを新たに見出した。LPAの産生は癌細胞の浸潤を誘導することが知られているので、本結果はcPAおよびカルバcPAの癌の浸潤抑制、転移抑制のメカニズムの一つであることを示唆するものと捉えることができる。
すべて 2005
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