研究概要 |
本研究の目的は、癌細胞に対してマイクロモル以下の濃度で顕著な細胞毒性を有するマクロライド化合物(-)-laulimalideおよび(-)-zampamolideの全合成である。その方法としてPdの反応を駆使した置換ジヒドロおよびテトラヒドロピラン環の新しくかつ汎用性の高い構築法を開拓するとともに、申請者が従来から行なっている置換ポリエンの立体制御法をさらに発展させて、Z型三置換アルケンの合成法を特に開発対象とすることであり、以下の成果を得た。 1.海洋産抗ガン活性マクロライド(-)-laulimalideの全合成を完成した。この全合成過程において、2価Pd触媒およびゼロ価Ni触媒を用いる2種類の選択的反応とエキソ型アリルシランの新規合成を展開したが、その一般性も調べた。以下にその概要を列挙する。 2.PdCl_2触媒を用いる分子内オキシパラデーション反応がジアステレオ選択的に進行して、立体特異的にヒドロピラン環合成を行うことが出来た。即ち、3-nonene-2,8-diolの8位水酸基をS配置に固定し、2位の水酸基をR,S配置にそして3,4位の二重結合をE,Z配置とした4種類の3-nonene-2,8-diolを用い、触媒量のPdCl_2(MeCN)_2を作用させたところ、立体特異的に2,6-ジ置換テトラヒドロピラン骨格が形成された。 3.ブロモエンインに対して、Kumada-Tamao-Corriu反応を行うと完全に立体化学が反転した三置換エンインが得られた。その反応機構を考察し報告した。 4.1,1-Dibromo-1alkeneに対してKumada-Tamao-Corriu反応により導いたビスアリルシランに、PPTSを作用させたところ、選択的なモノプロトデシリル化が起こり、エキソメチレン型アリルシランを得ることが出来た。
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