研究概要 |
水銀トリフラート・テトラメチルウレア錯体が末端アルキンの水和反応による,メチルケトンの生成反応において,強力な触媒作用(100回転以上)を発揮することを見いだした.従来法である等モル近い水銀塩を用いて,硫酸と共に加熱する方法からは,全くかけ離れた中性・室温での反応であり,水銀塩が2価に固定されて回転するため,酸化剤を必用とせず,水俣病の現任物質のメチル水銀を発生することのない触媒プロセスである.アルキンの近傍にアルケンが存在すれば,C-C結合形成後に,カチオンが水和を受け,水和的エンイン環化反応が期待でき,事実1000回転の触媒効率で水和的環化反応を実現した.また,アリールイン環化反応においても,1000回転の触媒効率でジヒドロナフタレンを与えることを見いだした.いずれもプロトデマーキュレーションによる触媒の再生が鍵となる反応であり,遷移金属触媒による同様な反応に比べて,圧倒的に触媒効率が高く,温和な反応条件である点が異なっている.さらにアリールエンイン環化反応,すなわち触媒的生合成類似タンデム環化反応を実現した.C-C結合形成のみならず,ヘテロ環の形成にも水銀トリフラートは強力な触媒作用を発揮し,ラクトン化,フラン環合成,インドール合成,環状エノール炭酸エステル合成に成功した.エキソメチレンエノールラクトン化が極めてスムーズに進行することから,アルキン酸を脱離基とするグリコシル化反応に挑み,例のない水銀トリフラート触媒グリコシル化反応を達成した.
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