研究概要 |
次世代の超高速・超低消費電力ナノ電子デバイス開発には、ソース-ドレイン間に対称性の低い金属ナノ粒子超格子を作製し粒子間のトンネル抵抗を低くする(粒子間距離を短くする)ことが必要不可欠である。本研究では、配位子殻の厚さを薄くするために、金ナノ粒子表面に対しポルフィリン環を平行に配置させる手法について検討した。ポルフィリン環を金ナノ粒子表面に平行に配置させるため、ポルフィリン環のメソ位を修飾した配位子を設計・合成し、合成した配位子で保護された金ナノ粒子の構造および光学特性を評価した。また、単一微細Auナノ粒子のSTS測定によるトンネル抵抗の評価、nc-AFMによるAuナノ粒子上の単一電子の観察も行った。 Auナノ粒子の保護配位子として、ポルフィリン誘導体であるmeso-5,10,15,20-tetrakis(2-thioacethylphenyl)porphyrinおよびmeso-5,10,15,20-tetrakis(2-thioacethylmethylphenyl)porphyrinを設計・合成し、Auナノ粒子の合成を行った。UV-visスペクトルから、ポルフィリン環がナノ粒子表面に対して平行に位置しており、ポルフィリン環とAuナノ粒子表面間の距離がポルフィリン環の電子状態や構造に影響していることが分かった。ナノデバイスの新規構成単位と期待されるAuクラスターの選択的大量合成では、ホスフィン保護AU_<11>クラスターとチオールとの配位子交換反応により、Au_<25>クラスターの選択的大量合成に成功した。Auナノ粒子の電子物性として、粒径2nm程度のアルカンチオール保護Auナノ粒子のSTS測定により、アルカンチオール層のトンネル抵抗がヘキサンチオールからオクタンチオールへの変化で1桁増加することを明らかにした。また、nc-AFMによる力測定により、Auナノ粒子上の単一電子観察に成功した。
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