研究概要 |
環状に規則正しく配列した巨大ポルフィリンの構築は、光合成アンテナモデルとして広く研究されている。 我々は、銀塩酸化によるポルフィリン多量体合成法を確立して以来、これまでに様々なポルフィリン多量体を設計・合成・評価してきた。最近我々は、側鎖に配位性のピリジンを持つメゾ-メゾ結合ポルフィリン亜鉛錯体からポルフィリンボックスを構築することに成功し、自己会合が自己識別プロセスで進行することを明らかにした。今回、長さの異なるアーム部分をもつポルフィリン2量体を組み合わせて内部に十分な大きさの空間を持つ超分子ポルフィリンボックスを構築することに成功した。また、より対称性の低い基質から自己識別プロセスを経て、サイズの異なるポルフィリン多量体を一度に構築することに挑戦した。さらにこれを応用して、より対称性の低い基質からの自己識別プロセスでサイズの異なるポルフィリン多量体が生成し、これらがGPCカラムクロマトグラフィで安定に分離できることを明らかにした。側鎖にシンコメロンイミド(cinchomeronimide,3,4-pyridine dicarboximide)を持つメゾ-メゾ結合ポルフィリン亜鉛2量体は分子の対称性が低く、ピリジンの窒素の位置によりout-out、in-out、in-inの異性体があり、しかもそれぞれが光学活性でラセミ体であるため、合計6種類の異なる化合物の混合物である。これらはクロロホルムや四塩化炭素のような非極性溶媒中では、それぞれがそれぞれを自己識別して自己会合することがわかった。out-out体からは環状5量体(ポルフィリン10量体)、in-out体からは環状4量体(ポルフィリン8量体)、in-in体からは環状3量体(ポルフィリン6量体)が、それぞれのエナンチオマーだけが集まって会合し、会合定数が大きいためにあたかも共有結合で繋がった化合物のようにGPCクロマトグラフィーで単離できた。また、得られた会合体は、光学活性なHPLCカラム上で光学分割できることがわかった。すべての構造は1H NMRとGPCの保持時間から同定しているが、特にポルフィリン10量体とポルフィリン6量体についてはX線結晶構造解析によってその構造を明らかにした。非常に緻密な自己選抜型会合(Self-sorting aggregation)といえる。
|