研究概要 |
ルテニウム三核錯体,[Ru3O(RCOO)6L3]n+,はターミナル配位子(L)および架橋カルボン酸イオンを変化させることによってその酸化還元電位を制御できる。周辺配位子としてdimethylaminopyridine(dmap)を有し,中央ユニットのみRu3骨格の架橋カルボン酸イオンが安息香酸イオンであり,それ以外のRu3骨格がプロピオン酸イオン架橋となるように設計したRu3デンドリマー錯体を合成した。このデンドリマーは酸化還元電位が周辺部から中央に向かって正電位側にシフトするように設計されている。このデンドリマーのサイクリックボルタモグラム(CV)はそれぞれの過程において1電子,3電子,6電子分の酸化還元波が見られ,目的通りの錯体が得られたことを示している。中央ユニットの酸化還元波のみが可逆性が悪いことから,この現象が電位勾配に起因するのではないかと考え,CVおよびDPVの掃引速度依存性などの測定を行った。還元方向の掃引に関しては掃引速度を変化させてもピーク位置に変化がみられなかったが,酸化方向に関しては掃引速度を速くするほどピーク位置が酸化側にシフトしていることが明らかになった。これは酸化方向の掃引の場合電位勾配が逆になるため,電極から直接電子移動が起こらなければならないためではないかと考えられたが,それ以外に吸着はと考えられる波も観測されたことから,より溶解度を上げるためにdmapのメチル基の代わりに長鎖アルキル基(炭素数11)を有する配位子を用いて同様なデンドリマーを合成した。溶解度の向上はみられたものの,CVを測定したところ全体的に可逆性の悪いボルタモグラムを示した。これはアルキル基が長すぎたため,電極と錯体の間に距離が生じたためすべてのユニットに対して可逆性が悪くなったと考えられた。
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